ジム・マーシャルが最初に作った4発キャビは、Bキャビでした。

しかしジムは、大きな箱(キャビ)に小さな箱(ヘッド)をただ載せた姿が 「美しくない!!」 ってことで、

横から見た時にヘッドとキャビが一体化しているように見せるためにキャビの上半分の奥行きを小さくしたことで

今のAキャビを作り出しました。

後にブライアン・プール&トレモローズのギタリストのリッキーが、ジムに

「へいジム!なぜキャビネットの上半分にアングルがついているんだい?」 と尋ねた時、

単純に見た目だけしか考えていないということをリッキーに知られたくなかったジムは、苦し紛れに

「スピーカーにアングルがついてると、ギターの音が遠くまで聴こえるからさ!キリッ」 と答えました。

しかし、いい加減なことを言ってしまったと心配になったジムは、バンドの演奏が始まったら

ホールの客席の後ろに飛んで行きました。

そして、どんなに満員になっても最後列までリッキーのギターの音がクリアに聴こえていることを確認して

ドヤ顔したとさ。めでたしめでたし。






・・・というのが、ジム・マーシャルさんがAキャビを開発した裏話。

(セリフの言い回しに一部脚色ありw)







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もはや言うまでもありませんが、上がA(アングル)キャビで、下がB(ボトム)キャビです。

ちなみにCキャビはありませんw

Aキャビは上半分にアングルがついているので、音が斜め上方向に飛んでいくため、

「モニターしやすい」 とか 「音が遠くまで飛びやすい」 とか言われます。

これはジムも想定していなかった副産物ですね♪

でも、敢えて好んでBキャビを使う人が意外と多いことも良く知られています。

Bキャビはアングルが無くてストレートなので、Aキャビとは音が異なると言われています。

ちなみに僕は、同じスピーカーユニットの載ったAキャビとBキャビを並べて交互に比較試奏したことは無いので

音の違いについてここで言及するのは避けます(^_^;)





んで。





AキャビとBキャビの音が違う理由は、よく 「Bキャビの方が体積が大きいから〜」 とは言われますけど、

バッフル板の違いについて言及している人が意外に少ないと僕は思います。

バッフル板というのは、スピーカーユニットが取りつけられている板のことです。

まずBキャビから見てみましょう。

1960B_Interior
え〜・・・勝手に拝借してきた画像で失礼します(汗)

Bキャビはご覧のようにバッフル板が1枚板です。

しかしAキャビは、

1960A_Interior
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、上半分と下半分がそれぞれ別々の板なんですね。

その2枚の板を接続している、という構造です。




オーディオ好きの人なら基礎知識として頭に入っているとは思いますが、

バッフル板が大きいと、基本的に低音が良く鳴ると言われています。

Bキャビの方がバッフル板の面積がAキャビの倍くらいある訳ですから、

単純にBキャビの方が低音再生能力に優れていると想像することができますね♪

さらに、Aキャビは2枚の板が接続されているのに対しBキャビは1枚板ですから、

剛性という意味でもそれぞれがきっと音に違う特性を持たせていることでしょう〜。

でも、Bキャビの方が優れてますよと言いたいのではなく、あくまでも好みですよね。





レコーディングエンジニアの遠藤淳也さんがブログに、キャビネット比較のことを書かれていました。

80年代と思われるAキャビと、現行の1936キャビという、

共に同じスピーカーユニットが載ったキャビの比較なのですが、

スピーカーが2発少ない1936の方がローが出ると書かれていました。

外寸も体積も違う2つのキャビなので、単純にバッフル板だけで結論を出すことはできませんが、

でもバッフル板の影響は大きいんじゃないか?と僕は勝手に思う訳です。





IMG_7242

IMG_7243
こちら、The History Of Marshall に載ってる図です。

上が1960で、下が1936の寸法です。

1960はキャスターで1936はゴム足、などの違いはあるため、単純に高さだけで物を言うことはできませんが

1936は2発キャビなのに高さが結構大きめに取られているのがわかると思います。

他のメーカーからもいろんな2発キャビは発売されていますが、

マーシャルの1936ほど高さのある(つまりバッフル板面積の大きい)2発キャビはあまりありません。

Bキャビが低音再生に優れていると言われる所以、そして1936のバッフル面積の大きさ。

この点から僕は1936はAキャビよりもスピーカーが少ないのに低音再生に優れているのでは?と

考えた訳です。

そこから考えると、一般的な1960より高さのある1960Tというキャビや、

2発キャビなのに外寸は1960と同じ1961というキャビがあることも、

実は音響特性をいろいろ計算された上でのことだったんだろうな〜と思う訳です。





・・・あ、あくまでも憶測ですよw

もちろんバッフル板だけが低音の要素ではないでしょうからね。

それに個体差や環境もあるでしょうし。

また、バッフル板面積の違いで低音の出方が変わることによって、相対的に

ハイやミドルの音の聞こえ方も変わってくるため、全体的な印象も変わるでしょう。





その点から考えると・・・

IMG_6583
僕のキャビ、Marshall 2045。

これは奥行きこそ小さいものの、高さと横幅(つまりバッフル板面積)は1936とほぼ同じです。

このキャビを使い始めて、それまでのキャビより低音が増えたとか減ったとか感じたことは無いんですが、

それはきっとそれまでのキャビよりも明らかにミドルの鳴り方が違っててそっちにばかり気が行ってるから

なのかもしれませんし、逆に言えば、奥行きがかなり小さいけれどバッフル板が大きいことによって

低音再生能力がバッフル板にフォローされているからだと言えるのかもしれません。

要は、バッフル板は低音にとって大きな要素であることに違いは無いんでしょうけど、

他にも奥行きだったり、バックパネルの構造だったり、木の種類だったり、ジョイント方法だったり・・・と

様々な要素の合わせ技でエンクロージャーの音が決まっているということなんでしょうね(^^)

「ただの木の箱」 なんて侮ったら痛い目にあいますw





今まではスピーカーユニットにばかり気が行ってましたけど、

昨年ケリーライトを使ったあたりから 「エンクロージャーの重要性」 もすごく感じるようになりました。

今、2045に載っているセレッションのG12H-30というスピーカー。

これは72年製なんですけど、これと同じスピーカーの69年製のを以前使ってたことがあるんですよ。

でも今の2045で聴いてるG12H-30とは全然違う音の印象でした。

製造年の違いはあれど、載せる箱によって音は全然違うということを体現していますよね(^^)

深いっす・・・・・・・・






キャビ比較ってことで、最後にこの動画を。



ちなみにこの動画、1982A(4発)、1983PA(2発)、1933(1発)、1912(1発)という12インチ搭載キャビには

どれもG12H-30という同一のスピーカーを載せて録られているんですけど、全然音が違いますよね!

意外にも1発の現行1912が、僕の好きな音だったりします・・・ww




これも面白いですよね。



スピーカーに角度を付けるためのTilt-A-Speakerですって(^^)